COLUMN

CITY UP!でスタートアップ! 2017年度最優秀プラン「無人AIレジ店舗」で先進的なコンビニが誕生!? 〜前編〜

2018年11月22日

「CITY UP!」というスローガンのもと、
未来へ向けた新しいプロジェクトを始動させているJR東日本。

これまで手がけてきた駅周辺サービスに磨きをかけるだけでなく、
これからは「くらしづくり(まちづくり)」にも挑戦していくそうです。
「住んで良かった」「働いて良かった」と思われるような沿線づくりや、
地域の顔である駅を中心とするまちづくりを地域と連携しながら進めています。

このコラムでは、その数あるプロジェクトの中から
とくに注目してほしい施設や取り組みを「CITY UP!」編集部が独自の視点でピックアップ!
第2回のテーマは、2017年から始まった「JR東日本スタートアッププログラム」です。
前編では、昨年度最優秀賞のサインポスト株式会社が提案した「無人AIレジ店舗」から、
JR東日本グループが創出しようとしている新たなサービスについて紹介します。

JR東日本は2017年4月より「JR東日本スタートアッププログラム」に取り組んでいます。このプログラムは、JR東日本グループの資源とベンチャー企業などが有するアイデアや技術を組み合わせ、新たなサービスやビジネスの創出を目的としています。ベンチャー企業や事業者からさまざまなアイデアを募り、そのなかからいくつかの事業を採択。第1回目の2017年度は、237件もの応募があり、11件が「アクセラレーションコース」、8件が「インキュベーションコース」で採択されました。
※「アクセラレーションコース」「インキュベーションコース」各コースの詳細についてはこちらをご確認ください。

 

2017年度採択案、コンビニの人手不足などを解消する「無人AIレジ店舗」。

 

昨年の2017年度最優秀賞に選ばれたのが、サインポスト株式会社が提案した「無人AIレジ店舗」。これは、AI(人工知能)を用いた無人決済システム「スーパーワンダーレジ」を組み込み、コンビニエンスストアの無人化を実現するアイデアです。その採択理由のひとつとして、駅構内のコンビニエンスストアで働くアルバイト不足の解消などが挙げられていたそうです。
採択された事業を実現するJR東日本スタートアップ株式会社マネージャーの阿久津智紀さんは言います。「実は、私はJR東日本に入社後3年間ほど、駅構内のコンビニエンスストアの店長を務めていました。十数年も前のことですが、その頃から人手不足は常態化していました。お客さまが多い駅はビジネスの立地としては申し分ないのですが、逆に忙しすぎてアルバイトが集まらないというジレンマを抱えていたのです」。当プログラムを主導するJR東日本事業創造本部の石川恵理子さんも「地方の駅の人手不足も深刻です。その課題を解決する一つの方法として、無人AIレジ店舗の実証実験に取り組みたいと考え、採択しました」と言います。
採択されたサインポスト株式会社は、無人AIレジの開発では先駆け的存在のベンチャー企業です。今回、人手不足に悩む小売業に無人AIレジで貢献したいとの思いで「JR東日本スタートアッププログラム」に応募したとのこと。イノベーション事業部部長代理の波川敏也さんも、以前から駅のコンビニの行列が気になっていたそうです。「とくに朝はスピーディに買い物ができれば利用客も助かるだろうなと思い、数年前から無人AIレジの研究開発をスタートさせました。店舗を持つJR東日本とシステムを持つ私たちが協業すれば先進的なコンビニが生まれると考え、応募しました」。
採択から1年が経ち、「無人AIレジ店舗」の実用化に向けた実証実験がJR赤羽駅(東京)のホームで行われています。

JR赤羽駅の5・6番ホームにあった
KIOSK跡を活用した「無人AIレジ店舗」。
ドリンク、パン、お菓子、スイーツなど
幅広い商品を販売している。

 

買い物は簡単! 商品を選んで、タッチするだけ。

 

買い物の仕方は、まず、店舗の入り口のリーダーライターにSuicaなどの交通系電子マネーをタッチして店内に入ります。棚から買いたい商品を選び、手に取ります。入り口に置かれたレジ袋を利用しても構いませんし、商品を鞄に入れてしまってもOK。買い物が終われば、決済ゲートに立ち、会計を行います。購入する商品の名前がタッチパネルに表示されるので、確認のうえ、交通系電子マネーをタッチ。購入金額が引き落とされ、レシートが出てきます。出口の自動ドアが開き、店舗の外へ出ると買い物は終了です。

1.入り口にあるリーダーライターにタッチ。入店は3人まで可。
2.商品を自由に選ぶ。そのまま鞄に入れてもOK。
3.商品を選び終わったら決済ゲートへ。
そして、交通系電子マネーで支払う。

店員がいないのに買い物ができるのは、天井や商品棚に設置された、AIを搭載した複数台のカメラが、お客さまが棚から手に取った商品を認識しているから。その情報が会計の際にタッチパネルに表示されます。入店しても何も買わないで店を出たいときは、表示される退店ボタンを押せば自動ドアが開き、外へ出られます。もちろん、会計は発生しないのでご安心を。

人の動向を認識するAI搭載カメラ。天井や商品棚に複数設置されている。

 

一つひとつ課題を解決しながら実現化へ!

 

今回の赤羽駅の実証実験では、一度に店舗に入れるお客さまの人数は3人までと設定されています。2017年11月にJR大宮駅で同様の実証実験を行ったときは入店可能人数は1人に設定されましたが、赤羽駅では「複数人のお客さまに対応する」という新たな課題を設定したそうです。「複数人のお客さまが一度に入店されると、棚から商品を取るときにお客さま同士の手が重なったりして、AIに認識違いが起こることがあります。手に取った商品は3つなのに、レジでは4つとカウントされたり。そういう場合は、お客さま自身がタッチパネルで個数を修正していただくようにお願いしています」と波川さん。「今年1月にオープンした無人コンビニ『Amazon GO』もその方法を採用していますね」と、石川さんはアメリカ・シアトルでの視察の経験を話します。波川さんは、「最終的には、複数人のお客さまが入店されてもAIが混乱せずに決済できるように精度を上げます。また、お客さまにとっても無人決済は初めての体験ですから、混乱されずに買い物ができるかどうかも検証したいです。お客さまの体験が貴重なデータになりますから」と、お客さまの協力を呼びかけます。
そんな無人AIレジ店舗を事業化するメリットについて、石川さんは、「収益はあったのに人手不足で閉店せざるを得ない店舗が出てきているのが現状です。お客さまが買い物をしたかったのに店舗がなくなってしまった場所に、省人化した無人AIレジ店舗がオープンすることは、お客さまサービスを充実させるという点でも重要な取り組みであり、収益にもつながるもの。それがメリットです」と話してくれました。

「実証実験を重ね、『無人AIレジ店舗』を
より精度の高いものにしていきたい」と話す波川さん。
「『無人AIレジ店舗』はお客さまサービスを
より充実させるための事業になる」と話す石川さん。

 

期待の大きさを感じる無人AIレジ店舗。実現はいつ?

 

「最終的には事業化するのがゴールですが、実証実験を重ねることで、お客さまに受け入れられるかどうか、JR東日本グループの事業としてふさわしいかどうかなどを検証したいと思います」と阿久津さんは言います。「大宮駅での実証実験ではお客さまの評価は高く、約9割、1700人以上のお客さまがアンケートに答えてくださり、概ね、『便利でいい』『実現されることを期待している』といったお褒めの言葉をいただきました。ニュースサイトでも話題になるなど期待の大きさを感じています」。
とは言え、大宮駅や赤羽駅での実証実験はサービスを絞り、商品を「買って、決済する」というシンプルなかたちでの実験。品出しやトラブル対応などクリアすべき課題はまだ残っています。「今後も実証実験を重ね、そうした課題を一つひとつクリアしていきます。個人的には、東京五輪が開催される2020年までに1号店がオープンできればうれしいです」と阿久津さんは、石川さんや波川さんとともに事業化に向けた意気込みを聞かせてくれました。
「無人AIレジ店舗」だけでなく、昨年の2017年度採択案が実現化へ向かって進行しているなか、11月29日(木)には今年度の協業プラン発表会が開催されます。一体どんなアイデアが採択されるのか今から楽しみです! 気になる方は、HPをぜひチェックしてみてください。

「JR東日本の事業としてふさわしいかどうかなど、
検証を続けながら採択案の実現を目指しています」と話す阿久津さん。

 

 

PROFILE

左:波川敏也
サインポスト株式会社イノベーション事業部部長代理。2010年、サインポスト株式会社入社。金融機関や公共機関のITコンサルタントなどに従事。15年からイノベーション事業部でスーパーワンダーレジなどの製品企画、基本設計、知財などの業務全般を担当。

中:阿久津 智紀
JR東日本スタートアップ株式会社マネージャー。2004年、東日本旅客鉄道株式会社入社。17年、事業創造本部地域活性化部門でJR東日本スタートアッププログラムの立ち上げに携わり、18年、JR東日本スタートアップ株式会社を設立、出資業務とプログラム運営を担当する。

右:石川 恵理子
事業創造本部新事業・地域活性化部門事業開発グループ。2008年、東日本旅客鉄道株式会社入社。14年からJR東日本ステーションリテイリング(現:JR東日本リテールネット)本社営業部でインバウンド・新規施策の企画に携わり、17年からJR東日本スタートアッププログラム事務局の担当に。

DATE
無人AIレジ店舗
場所:JR赤羽駅5・6番線ホーム
営業期間:2018年10月17日から約2か月間
営業時間:10:00〜20:00 ※平日のみ。土日祝は休み。