COLUMN

渋谷を「国際都市SHIBUYA」へ 「渋谷スクランブルスクエア」開発に携わる3人の挑戦

2019年7月8日

2019年11月1日にオープンする「渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)(以下、渋谷スクランブルスクエア)」。
100年に一度といわれる再開発が進む渋谷エリア内でも、最も高い地上47階建て。東急電鉄・JR東日本・東京メトロの鉄道三社の共同プロジェクトとして開発される、渋谷駅直結・直上の新ランドマークとして注目が集まります。
渋谷スクランブルスクエアは、展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」、オフィス、産業交流施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」および、商業施設からなる大規模複合施設。今回は、それぞれの施設を担当している渋谷スクランブルスクエア株式会社のプロジェクト担当メンバーに話を伺いました。

 

未完成の街・渋谷だから、未知なる出会いやアイデアを生む土壌がある

渋谷スクランブルスクエア株式会社 渋谷キューズDiv.課長
平田絵美

2005年東日本旅客鉄道株式会社入社。2018年4月より現職に出向し、15階フロアにある産業交流施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」の企画・運営を担当している。

 

多様な文化、人が交差・交流して、新たな価値を生み出す拠点を作りたい――。「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」が目指すのは、渋谷でしか実現できない“多様性を受け入れあうコミュニティ”の創造です。
世界的に見ても、渋谷ほどあらゆるカルチャーを受け入れ進化してきた街はありません。渋谷区が「違いを力に変える街」というコンセプトを掲げているように、この地から時代の先端を行く価値観が生まれ、斬新なスタイルも多様性の一つとして歓迎されてきました。
カオスで、未完成で、エネルギーがある。だからこそ、あっと驚くイノベーションが生まれる可能性がある。渋谷はそんな街だと考えています。

その渋谷に誕生する駅直上の施設で、どんな社会価値に繋がる未来の種を生み出せるのか。その挑戦への一つの仮説として、「SHIBUYA QWS」は「コミュニティ・プログラム・空間」という3つの軸で価値を提供していきたいと考えています。
コミュニティのコンセプトは「スクランブルソサエティ」。企業人や学生、フリーランス、経営者など様々なバックグラウンドをもつ人々が肩書や立場を超えて集まり、刺激を与えあいながら、それぞれの課題を磨き上げ、自発的・創発的にいろんなアイデアが生まれる発想の場を作りたい。多様な人材が集まる、という点でコワーキングスペースをイメージされるかもしれませんが、「SHIBUYA QWS」が目指しているのは、他者との相互の関わりから新しい価値を生み出すことです。
そのために、200名規模のイベントの受け入れが可能で、スクランブル交差点を眼下にのぞむイベントスペースをはじめ、グループワークなど他者とのスクランブルを可能とするフレキシブルな共創空間を作りました。さらに、新しいアイデアの具現化を目指し、活動を行う人に対して、先輩起業家や投資家などがアドバイスをしたり、支援のためのコミュニケーション・対話が生まれたりするようなサロンを作ろうと、現在企画を進めています。
また、「QWS」の名称は「問いの感性(Question with Sensibility)」の頭文字から命名していますが、「問い(Question)」を起点とし、0→1を生み出すことを支援するための独自プログラムを、東京大学・東京工業大学・慶應義塾大学・早稲田大学・東京都市大学の5大学をはじめとする様々なパートナーと連携して検討中。プログラムフレームを「出会う/磨く/放つ」とし、出会いからチームビルディング、そしてチームの中で磨かれて「問い」が深まり、それが渋谷や世界に放たれていくことをサポートしていきます。領域を横断して知識を広げたり、視座を変えて物事を捉えることによって生まれる化学反応は、イノベーションの起点になります。それが結果として新たなビジネスモデルの立案や、クリエイティブ人材の育成などにもつながると考えています。

アメリカの都市社会学者、リチャード・フロリダさんは「クリエイティブな都市には共通して、テクノロジー(技術やノウハウ)、タレント(人材)、トレランス(寛容性)の3つのTが揃っている」と言っています。渋谷はまさにそれが当てはまり、どんな他者も受け入れる素養があると思います。渋谷が持つ、豊かなカルチャーの土壌を生かし、「SHIBUYA QWS」でアイデアを形にしていく。志のある人をサポートし、自己実現の機会が与えられる場であったらいいなと思っています。

7月4日から「SHIBUYA QWS」の会員募集を開始しました。
「SHIBUYA QWSって、なんだかおもしろい人がたくさん集まっているね」と思っていただけるように、そして人々が繋がり、「問い」ながら未知の可能性をつくり続けていくような場所を実現していきたいですね。

 

渋谷から世界に広がっていくような、新しい展望施設の体験を提供したい

渋谷スクランブルスクエア株式会社 商業・展望Dept. 展望Div.チーフ
石黒恵大

2012年株式会社ジェイアール東日本企画に入社。
18年7月より現職に出向し、展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」の企画・立ち上げを担当。

 

僕が担当しているのは、展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」の企画・運営全般です。施設の最大の魅力は、渋谷最高峰の地上約230メートルに位置する、日本最大級の屋上展望空間からの絶景。スクランブル交差点はもちろん、富士山や東京タワー、東京スカイツリー®などを一望できます。
普段、渋谷を歩いていると意識しにくいのですが、渋谷はまさに“谷”。駅を中心にして、表参道や恵比寿、代官山、代々木など周辺の街へとつながっています。「SHIBUYA SKY」から街を見ると、渋谷の中心に立っているという感覚、さらには、自分のいる場所から世界へと広がっているような気持ちになるんです。360°一望できるパノラマビューは、「SHIBUYA SKY」の大きな魅力だと思います。
ソフト面では、世界的にも有名なクリエイティブ集団、ライゾマティクスさんを演出プランナーとして採用し、音響、照明、映像演出によってお客さまの想像力を刺激する体験型の展望空間を作り上げています。エレベーターで上にあがり展望空間に足を踏み入れる、その一連のプロセスから、お客さまにわくわく感、新しい気づきを感じてもらいたいと考えています。

「SHIBUYA QWS」と同様に「SHIBUYA SKY」も、“これまでにない空間を作り上げる”というプロジェクトです。プロジェクトメンバー間のイメージの共有から、試行錯誤の連続でした。「あの施設のこういった部分と、あの建物のこの要素を組み合わせたい」など、描くイメージを一つひとつ言語化していかなければいけません。そもそも、渋谷スクランブルスクエア株式会社には、プロジェクトの共同事業者からの出向メンバーが50人ほどいます。さまざまなバックグラウンドのメンバーが集まっているので、共通言語が全然違うんです。コミュニケーションを重ねながらお互いを理解し、同じゴールに向かっていくプロセスは、渋谷スクランブルスクエアに携わっていなければ経験できなかったこと。毎日が本当に刺激的です。
よく考えれば、「いろんなカルチャーの人が集まって作っていく」という企画のプロセス自体が、すごく渋谷らしいですよね。人、モノ、コトが流れ込んできて、カオスな中で新しいアイデアが生まれていく。100年に一度と呼ばれる再開発のシンボルが、渋谷的に生まれていくのがとても面白いなと思います。

 

短期サイクルのイベントで、渋谷の中心から「世界最旬」を届ける

渋谷スクランブルスクエア株式会社 商業・展望Dept. プロモーションDiv.チーフ
武藤真守

2013年株式会社ジェイアール東日本都市開発に入社。17年8月より現職に出向。商業施設のテナントリーシング、売上管理、決済関連などの基盤づくりに従事。現在は、同施設内のイベント・ポップアップスペースのプロジェクトマネジメントを担当。

 

僕は、渋谷スクランブルスクエア株式会社が本格稼働した2017年8月当初からこのプロジェクトに参画し、商業施設のテナントリーシングを担当してきました。現在担当しているのは、施設内にあるイベントスペース(3箇所)、ポップアップスペース(3箇所)の全体統括です。
商業施設のビジョンは「世界最旬」。文化の発信地・渋谷の中心で、最も旬なモノやコトを提供していく。そのために3つの特徴あるイベントスペースを用意しています。
3階のスペースは鉄道の乗換導線に面しているため、来館者以外の方々への訴求も可能です。新作商品や限定・コラボレーション商品の発表や販売、商品プロモーションなどに使っていただけると考えています。7階では、吹抜け空間と吊りバトンを活用したダイナミックな広告も可能。12階のスペースは、商業施設としては珍しいホテルのバンケットルームのようなイベントスペースです。展示会やトークショー、セミナーなど、広さが必要なイベントにご活用いただけます。共通してそのすべてに食の機能が併設されていることも特徴です。3階、12階はイベント主催者が利用できる厨房が併設され、7階は常時運営しているカフェが併設されています。イベントスペースでの食の提供は、ほとんどの場合ケータリングになりますが、渋谷スクランブルスクエアであれば、その場で調理したあたたかい食事を提供できます。人々のコミュニケーションが自然に生まれる空間づくりのために、「食の共有」はとても重要な要素だと考えています。

イベントスペースの商品企画を進める中で、最大のチャレンジは、稼働率を追求しながら“最旬”なイベントを、単日から月単位で開催しつづけることです。「ここに行けば旬がわかる」という場をつくるために、どんなイベントを行うべきか。プロジェクトメンバー間で“最旬”の定義を議論し、誰に何をオファーするか、提案されたイベント企画の中から何を実施すべきか、丁寧にディスカッションを重ねながら決定しています。

デジタルネイティブ世代が増え、インターネットで容易に欲しいものが手に入る時代ですので、「今さら、商業施設なんていらない」と思う方もいるかもしれません。だからこそ、僕たちが大切にしているのは「リアルな体験価値」。お客さまを継続的にわくわくさせ、Wow!を届けるために“本物・本質”を提供しなければいけません。訪れるお客さまに「私の渋谷スクランブルスクエア」と思っていただけるように、200店以上のテナントの個性と、イベントスペース、ポップアップスペースが提供できる“最旬”が勝負になるでしょう。渋谷らしい先進的な価値発信はもちろん、渋谷というフィルターを通した日本の伝統的な文化の提供、先進性と伝統、都市と地方など、従来の概念にとらわれない幅広い価値を提供していきたいと思っています。